ある日、母の目を盗んで外に遊びに出た。

行き先は裏にある砂場。そこにはすでに遊んでいる近所の友達がいた。

残念なことに自分は遊ぶ道具を全く持っていなかった。

「一緒に遊ぼうよ」、私が言うと

「いいよ」

「うちに帰って道具持ってくるよ」

そう言ってまた家に戻るのだが、私の自宅は団地の三階なので階段を上がって戻るのが嫌だからいつも下から

「おか〜さ〜ん」と叫んでいた。

だから、今でも近所のおばさん達には語り草になっていて、たまに会うとその話もされるのでいつも恥ずかしい、でもほのぼのとした思いをするものである。

案の定、しばらくすると母が出て来て怒り始める。

それはそうだ、昼寝の時間を抜け出して来たので怒るはずだ。

「何やってるの!お昼寝の時間でしょ! お昼寝してから行きなさい!」

まぁ、大きな声で三階のベランダから怒らないといけないのだから母親稼業も大変である。こんなことはしょっちゅうなので近所ではだいぶ有名になっていたのではないかと思っている。

親には勝てないので、しょぼくれて昼寝しに自宅に戻るが、その後はもちろん昼寝から覚めたのが夕方近くで、約束を果たす為にまた砂場に行ってみると誰もいなかった。

というエピソードがあるくらい外遊びが好きで家から抜け出すことが多かった。母親も呆れていたと思う。

でも母親もそんなに厳しい人でなく、門限も

「外の電気がついてたら戻って来なさい」というくらいである。

一度、母が弟を産むときに祖母が家の面倒を見に来たことがあるが、とにかく私には驚かされたらしい。

学校から帰ってくるやいなや

「遊びに行ってくる!」

と玄関を上がることなくカバンを投げ捨てて出て行くのは相当ビックリしていたと母から聞かされたことがある。

小さい頃は外で遊んでいたことしかあまり記憶がない。

それでも嫌なことは覚えている。

ある日、友達二人と遊んでいてそのうちの一人の姉がベランダから呼び寄せたのでみんなでその家に向かったのだが、何故か自分だけ入れてもらえず扉の前で待たされた。

10分くらい待ったのだろうか、静かに開いてお姉さんが顔を出して

「ごめんね、〜〜〜〜」と言われてお菓子だけもらって門前払いとなった。

「ごめんね」の後の言葉は覚えていないが、すごい悔しい思いをして泣きながらお菓子を食べながら家に戻った記憶がある。

多分その経験からだと思うが、友達には強い感情は抱かないようにしてしまっている。どうせ裏切るのだろうから。そして、自分も随分と友達を作っては切ってという事を平気でするような人間になっていったのは否めない。

その記憶だけははっきり覚えている。